オピニオンコラムcolumn
世界の小児科学会が推奨
「離乳食にもオリーブオイル」
オリーブオイルは、お子さんの身体発育にもとても良いということをご存知ですか。古代ローマ時代から離乳食にもオリーブオイルが使われており、現代でもスペイン小児科学会やヨーロッパ小児栄養消化器肝臓学会では生後6ヶ月以降の赤ちゃんにオリーブオイルを摂取させることを推奨しています。
離乳期からの乳幼児にとって非常に大切な「脳や神経組織」「骨組織」の発達に、三大栄養素の脂質は欠かせません。食べものからの脂質の摂取が必要で脂質の量ととともに、どのような種類の脂質をどのような配合で摂取したらよいかが重要で、食事の影響はとても大きいと言えるでしょう。口にした油によって赤ちゃんのからだの脂肪酸※の構成成分が変わってくるので、各脂肪酸のバランスが母乳に近く、酸化されにくいオリーブオイルを、お子さんの食事に積極的に活用することをおすすめします。
※「脂肪酸」は「油脂」の主要な構成成分で、脂肪酸には後述のコラムにあるように、いろいろな種類があります。
脂質の摂り方が、
赤ちゃんの脳の発達を左右する
人間の身体の神経組織の細胞は、他の組織の細胞と同様に「脂肪酸」が二重層になった細胞膜で包まれています。特に乳幼児の脳の50-60%は、脂肪酸で出来ています。
だからこそ脳細胞を正常に発達させるためには、油脂の摂取が不可欠。特に乳幼児期には、摂取した油脂の多くが脳細胞を含む神経の細胞膜の成分として使われるので、どんな油脂を摂るかでお子さんの神経の細胞膜が違ってきます。
<細胞膜の構造>
細胞膜の構成要素であるリン脂質は、脂肪酸などで作られています。
オリーブオイルの脂肪酸のバランスは、
母乳に近い
植物油の中で最も母乳に近いのがオリーブオイルなので、離乳食へのオリーブオイル活用が推奨されているのです。
出典:『オリーヴの本―地中海からの美と健康の贈り物』
ベルナール ジャコト
オリーブオイルに含まれるオレイン酸が、
骨の発育を促進
オリーブオイルはオレイン酸を75%含有しています。
オレイン酸が多いため、昔から「オリーブオイルは骨を強くする」とも言われてきました。オレイン酸がカルシウムの吸収を促進し、カルシウムが骨に沈着するように働くということは、研究によって証明されています。
必須脂肪酸のバランス改善にも
オリーブオイル
オメガ9のオレイン酸は、近年問題になっているオメガ6の摂取過多を改善するのにも役立ちます。 脂肪酸には、大きく分けて4つのグループがあります。
- バターや牛脂、ココナッツオイルなどに多く含まれる「飽和脂肪酸」(ラウリン酸、パルミチン酸など)
- オリーブオイルなどに多く含まれる「オメガ9系脂肪酸」(オレイン酸など)
- ナタネ油やコーン油などに多く含まれる「オメガ6系脂肪酸」(リノール酸など)
- 青魚やえごま油などに多く含まれる「オメガ3系脂肪酸」(DHA、EPA、α-リノレン酸など)
このうち、体の中で作ることができない、オメガ3系脂肪酸と、オメガ6系脂肪酸は、必須脂肪酸と言われています。オメガ6とオメガ3は、体内で対抗するような働き方をします。オメガ6は、血液を凝固させたり、体内の炎症を促進したりする働きがあり、オメガ3は、血液を固まりにくくしたり、炎症を抑えたりする働きがあります。この2つの脂肪酸のバランスが崩れて、オメガ6が過剰になると、血が固まりやすくなって心筋梗塞などのリスクが高まったり、アレルギー症状が起きやすくなったり、逆にオメガ3が多すぎると、血液がサラサラになりすぎて、出血が止まりにくくなったりするのです。
オメガ3とオメガ6との理想的な摂取バランスは1:2ですが、日本の多くの人が1:5~10程度になっていると言われています。
それは、市販されているサラダ油をはじめスナック菓子や、加熱調理に使われる油の多くがオメガ6が主成分だからです。食品に含まれるオメガ3はもともと少なく、さらに酸化されやすい性質で加熱調理に使えません。そのため、オメガ3の摂取量を増やしてバランスをとるのは難しいのです。
そこで実践したいのが、オメガ9であるオレイン酸が主成分のオリーブオイルを、オメガ6の代わりに使うこと。オメガ6の摂取量を減らせば、オメガ3と6のバランスが1:2に近づくことが期待できます。
摂取するならエクストラバージンオリーブ
オイルがおすすめ
オレイン酸は酸化されにくい上に、オリーブオイルには抗酸化物質が多いので、オリーブオイルは加熱調理にも最適。特に、オリーブの実を種も皮も丸ごと絞っただけでつくられるエクストラバージンオリーブオイルには、ポリフェノールやビタミンE、β-カロテンなど多種多様な抗酸化物質がより豊富なのでより健康的な発育への効果が期待できます。エクストラバージンオリーブオイルの中でも、香り・辛味の強いものとマイルドなものがあります。お子様にはマイルドなタイプのものがお勧めです。
離乳食に2~3摘たらすだけ!おすすめの
食べ合わせで更に栄養効果アップ
脂肪酸のバランスが母乳に近く酸化されにくいオリーブオイル。もちろん母乳の代わりにはなりませんが、離乳食にオリーブオイルをプラスするのは理に叶っています。オリーブオイルを離乳食に使いましょう。
離乳食としておススメなのが、緑黄色野菜です。オリーブオイルを使って加熱したり、また、そのままドレッシングとして使うことで、脂溶性ビタミンの吸収率が高まります。ペースト状にした 野菜 とオリーブオイルは味の相性もピッタリです。また離乳食が魚なら、特にエクストラバージンオリーブオイルと一緒に摂るのがおすすめです。魚に含まれるオメガ3(EPA)は脳の発育には良いものですが、酸化されやすい脂肪酸です。抗酸化成分たっぷりのエクストラバージンオリーブオイルとともに摂ることで、酸化を防ぐように働きます。
<おすすめの食べ方>
- 緑黄色野菜と一緒に!
- ビタミンA・E・Kといった脂溶性ビタミンの吸収率がアップ(緑黄色野菜に多く含まれるβ-カロテンは大幅UP)
- 魚と一緒に!
- 魚に含まれる酸化されやすいオメガ3脂肪酸の酸化を防止
- カルシウムの多い食品と一緒に!
- (魚介類、大豆、小松菜、海藻など)カルシウムの吸収を促進
妊娠期のお母さんの健康維持にも
エクストラバージンオリーブオイル
妊娠中の健康維持 にも、エクストラバージンオリーブオイルを活用しましょう。お刺身や納豆、目玉焼きなどを食べるときは、オリーブオイルと醤油を5:1の割合で混ぜたオリーブオイル醤油を使えば、味には満足感があるため醤油の量も減り減塩になるので、妊娠中毒症の予防になります。
また、妊娠中になりがちな便秘にも有効です。オレイン酸が腸管を刺激して腸の運動を促すことで、たくさんの水が大腸に行って便を柔らかくします。水溶性食物繊維が多いキウイと一緒に摂るとさらに効果的。しかも、オリーブオイルがキウイの酸っぱさも和らげて、いっそう美味しくなります。
油脂の摂取をむやみに控えるのは間違い
量の制限より、質の良い油脂の摂取を
妊娠や出産を機に食事を見直すお母さんは多いと思います。大切なこの時期こそ、エクストラバージンオリーブオイルを上手に利用して、母子ともに健康を保ってください。油の摂取と中性脂肪 ・体脂肪の増加を、つなげて考えてはいないでしょうか。自分も子どもも太ってはいけないという思いから、低脂肪食にするのは全くの間違いです。
赤ちゃんも成人も、人間の身体は数十兆にも及ぶ細胞でできています。そして、脳・神経細胞だけでなく、細胞の1つ1つを包む細胞膜のすべてが脂質です。特に乳幼児については成長のためにも、病気に強い身体をつくるためにも、脂質の摂取は必須。神経系の細胞の50%以上は脂肪酸なので、極端に油が少ない食事では、脳の発育が遅れる恐れもあります。油の量を制限するより、脂肪酸をバランス良く摂ること、酸化されていない質の良い脂質を摂ることを心がけていきましょう。
コラム:
なぜオメガ3は酸化されやすく、オリーブ
オイルのオメガ9は酸化されにくいのか
脂肪酸はその分子内の二重結合の有無で分類されています。二重結合がないのが飽和脂肪酸、あるのが不飽和脂肪酸です。さらに、不飽和脂肪酸の中で、二重結合が1つの一価不飽和脂肪酸(オレイン酸など)と、2つ以上ある多価不飽和脂肪酸(リノール酸や、EPA、DHAなど)に分類されます。二重結合は酸素と結合しやすく酸化されやすいので、二重結合が多いほど酸化されやすい脂肪酸といえます。つまり、分子構造に二重結合が1つだけのオメガ9のオレイン酸よりも、数か所あるオメガ3のEPA、DHA、オメガ6のリノール酸といった脂肪酸の方が酸化されやすいのです。
エクストラバージンオリーブオイルは、主成分が酸化されにくいオレイン酸であることに加え、ポリフェノールや、ビタミンE、β‐カロテンといった抗酸化物質が多いため、特に酸化に強い油とされているのです。
監修:オリーヴァ内科クリニック院長 横山淳一
-
横山 淳一 先生オリーヴァ内科クリニック 院長
医学博士。1973年千葉大学医学部卒。東京慈恵医科大学内科学教授を経て、現職。日本糖尿病学会認定糖尿病専門医・指導医、日本内分泌学会認定内分泌代謝科専門医。著書に「炭水化物を食べながらやせられる!地中海式世界最強の健康ダイエット」など多数。